あまりの桜子の気に入りように、周りは驚いたが、相手は関白左大臣家の姫君。

自分達とは、格が違う。

「そ、そうですわね。」

一瞬、女房達がざわつき始めた事を、依楼葉は見逃さなかった。


「藤壺の女御様。」

「どうしました?和歌。」

「私の事を、そこまでお気に召して頂いて、有難うございます。ですが、出仕したばかりの私では、女御様の御話し相手にもなりません。まずは、身の回りのお世話などさせて頂ければと思います。」

「それがいいわ。」

一番最初に反応したのは、綾子だった。

もし依楼葉が、桜子の身の回りの世話をすれば、一緒にお勤めできると思ったのだ。

「そうよのう。皆も、そう思うかのう。」

桜子の質問に、他の女房もうんうんと、頷いた。

依楼葉は、ようやくほっと、一安心した。


「では、和歌の姫君。早速、参りましょうか。」

「はい、綾子様。」

綾子と依楼葉は、頭を下げると、桜子の元を離れた。