だが、桜子は怒るどころか、微笑んでいる。

「よくぞ、申してくれた。」

「藤壺の女御様?」

周りにいる女房達は、不思議そうに顔を見合わせる。

「もう少しで、帝に愛想をつかされるところであった。和歌よ、有難う。」

「いいえ。お力になれて、何よりでございます。」

すると周りからは、さすがは和歌の姫君と、賞賛の声があがった。


「藤壺の女御様。やはり和歌の姫君をお招きして、正しかったですわね。」

綾子も、和歌の味方だ。

「そうね、綾子。」

藤壺の女御・桜子も、満足そうな表情を浮かべる。


「だけどそうなると、和歌の姫君様は、何のお勤めをすればよいのでしょう。」

綾子が気を利かせて、桜子に尋ねた。

「そうですわね。漢詩の家庭教師になればと、思っていたのですが……」

他の女房も、どうしましょうと言った雰囲気だ。

「よいよい。和歌は、私の身の回りにいてくれれば、それでよい。」