数日後、依楼葉は藤壺の女御、桜子の元へ女房として、出仕した。

「本日から、宜しくお願い致します。」

「ああ、よかった。本当に来てくれて。」

桜子は依楼葉の顔を見ると、ほっとしたようだ。

「和歌には、一度お断わりされてるからのう。ほんに来てくれるとは、思うておいなかった。」

「その節は、誠に申し訳ございませんでした。」

依楼葉は、頭を下げながら思った。


桜子様は、どこか父・橘文弘に似ていると。


「女房の勤めは、綾子から聞くと良い。」

「はい。」

側には綾子も来ており、依楼葉とお互い、笑顔になった。


そんな3人を見て、他の女房達は、また騒ぎ出す。

「見てみて。藤壺には、三大臣の姫君様が揃うておるわ。」

「ええ。太政大臣の姫君様に、左大臣・右大臣の姫君様が付き従うなって。とても絵になるわ。」

依楼葉は、咲哉に扮していた時の、女房達の噂好きなところを、思い出した。