弟としても、居ても立っても居られないだろう。

「そうだ。隼也にも、話があるのだ。」

照明も、気持ち隼也の方を向いた。


「……これも太政大臣殿から言われたのだが。隼也の早い出世を妬む者が、宮中にいるらしい。」

だが隼也は、特別驚く訳でもない。

「……やはりでしたか。」

しかも、前からその事を知っていたようだ。

「ご心配をお掛けすると思い、今まで黙っておりましたが、身に覚えがあります。」

「そんな!」

驚いたのは、依楼葉の方だった。

咲哉や自分の時は、そんな事一度も聞いた事がなかった。


「咲哉の事は、皆、少年の時から知っておったからのう。多少早めに出世しても、それが援護になった。だが隼也は、皆に名が知れ渡る前に、中納言になってしまった。」

隼也はそれを聞いて、拳を強く握る。

「早すぎる出世を、責めているのではない。そなたは、依楼葉が咲哉に扮している事を、薄々感じていた。その上で、早くその状況を抜け出して欲しいと思っていたのだろう?」