依楼葉を気に入っていた冬の左大将も、二人の姿を見れば、どれだけ惹かれ合っているかが分かる。

「さあ。いつものように、我々の花見の祝宴を致しましょう。」

冬の君はそう言うと、依楼葉を帝の隣に座らせた。


「和歌の姫君、見るがよい。毎年冬の君は、こうして桜の木の下で舞ってくれるのじゃ。」

帝がそう言うと、月明かりの中、冬の君が得意の舞いを披露し始めた。

それを見ながら帝は、酒を嗜む。

それはまるで、桜の精が躍っているようだった。


「和歌の姫君。ここで会った事は、夢かと思われよ。」

「夢……」

「そなたにはそなたなりの、私との恋の道を歩めない理由があるのであろう?ならば、今しばらくの間は夢と思い、存分に夢を楽しまれよ。」


舞う公達。

光る月夜。

隣には、夢にまで見た恋しい人。


「ならば桜の君様。来年も、この桜の下でお会いする事はできましょうか。」

「ああ。是非にもあらず。」

桜の君は、優しく微笑んだ。