「素敵なお話!」

「さすがは、関白左大臣家の姫君ですわ。」

依楼葉は、尚も続けた。

「ですがこの絵巻は、”あなたの周りは敵だらけですよ”と言っているようなものですから、あまり帝の御前に出すのは、適さないかと思われます。」

そして依楼葉は、一礼をするとまた、花見の祝宴の準備に、戻って行った。


「ありがとう、和歌の姫君。」

綾子は、依楼葉にお礼を言った。

「いいえ。お役に立てて、何よりですわ。」

依楼葉は、密かに今日この場所に来て、よかったと思った。


そして桜子の方だが、花見の祝宴が始まり、五条帝に華やかな絵巻が披露された。

どの絵巻も、太政大臣家の物で、豪華絢爛なものばかりであった。


その中でふと、五条帝は一つの絵巻が、桜子の後ろに隠されている事に気づいた。

「藤壺の女御、それは?」

「ああ、これは……」

帝の問いに、桜子は絵巻を手に取った。

出すか出すまいか迷ったが、帝の問いに答えないのもおかしい。