噂に聞いた姫君との対面に、藤壺の女御・桜子も満足そうだ。

「藤壺の女御様。この度、女房に推薦して頂いたのにも関わらず、お断りを致しまして、申し訳ございませんでした。」

「よいよい。具合があまり、宜しくないのであろう?春の中納言殿も、それで命を落とされた。お体、大事になさい。」

依楼葉は、なんて優しいお方なのだろうと思った。

「去年に続いての、花見の祝宴の手伝い。すまぬ事をした。だがこの大事な祝宴、他の者には頼めなくてのう。無理しない程度に、手伝って下さい。」

「……有難いお言葉、勿体のうございます。」

桜子の温かい言葉が、心に染みわたった。


もし、帝の女御様ではなかったなら……

いやその前に、帝と出会っていなければ……

このお方の女房に、進んでなっただろうに。

依楼葉は、そう思った。


「では、和歌の姫君。今年も、お膳配りをお頼みしましょうか。」

「はい。」