花見の祝宴の日。

依楼葉は、藤壺を訪れた。

「ああ、和歌の姫君!」

「あ、綾子様。」

咲哉に扮していた時、宿直をしていた依楼葉の元に、夜這いに来た姫だ。

その行動力から、織姫とも呼ばれる、浮名を流す女性。


「また、会えて嬉しいわ。今日のお手伝いは、ぜひ和歌の姫君をと藤壺の女御様に推したのも、私なのよ。」

「それは、有難い事です。」

父・藤原照明が言っていた通り、本当は女房を断った壺になど、来たくはなかった。

だが、女房を断った上に、手伝いまで断っては、父の顔が潰れる。

それで受けてみたのだが、やはり綾子様にあったかと、依楼葉は密かに、ため息をついた。


「そう言えば、お体の具合が悪いんですって?今日は大丈夫でした?」

「ええ、今日は何とか。」

にこっと笑う、依楼葉。

それも何とか、切り抜けなければと、依楼葉は思った。