「だがのう。他に適任者もいなく、未だこの壺には新しい女房も迎えてはおらぬ。それに、他の者に手伝いを頼んでも、あの花見の祝宴じゃ。乗り切れるかどうか、分からぬ。」

意外な事に桜子は、依楼葉の能力を買っているようだった。


まあ、あの時は既に咲哉に扮して、宮中に出仕していたのだから、依楼葉だって、ある程度どのように動けばよいのか、分かっていたからなのかもしれないが。

「……娘に、尋ねてみます。」

父・藤原照明の口癖。

早速、その日のうちに、依楼葉に聞いてみた。


「いいですよ。一日だけでしょう?」

依楼葉は、あっさり快諾してしまった。

「本当にいいのか?女房になるのを、断った壺だぞ?」

「父上様は、私の体調が悪いから断ったと、仰って下さったのでしょう?大丈夫です。具合が悪い振りなら、咲哉の時ですっかり身に着きました。」

そして、大きな欠伸をする。

「これ、依楼葉。」