「ひぃいいい!い、依楼葉!そなた、何をする気なのだ!」

「依楼葉!危ないから、刀を放しなさい!」

すると依楼葉は、突然長い髪を、肩まで切り始めた。

「はぁぁぁぁ……」

女の命を切り始めた依楼葉に、母は気が遠くなる。


ある程度、髪を切った依楼葉は、上着を脱ぎ去り、袴になった。

「おい、おまえ。依楼葉の姿を見ろ。」

「ええ……」

目を開けた母の瞳に、一人の青年が飛び込んできた。

「さ、咲哉?」


さすがは双子。

髪を切った依楼葉は、咲哉の生き写しだった。


「父上様、母上様。我は今日から、咲哉になります。」

「い、依楼葉!?」

そして依楼葉は早速、胡坐をかいて見せた。

「私は咲哉から、左大臣家を頼むと言われました。」

「咲哉から?」

父と母は、顔を見合わせた。


「我に、婿をとっている暇はないのでしょう?しかも、咲哉がいないくなれば、西の方も右大臣家も、危なくなる。」