藤原照明は帰宅早々、依楼葉の部屋を訪れた。

母、東の方も一緒だ。

「依楼葉。今日はな、そなたに嬉しい話を持って来たのだ。」

既に話を聞いていた、東の方も、心が浮き立っている。

「何でしょう、父上。」

「実はな。藤壺の女御様のところで、女房が一人足りないと言うのだ。」

依楼葉は、一瞬で嫌な気配を感じ取った。

「もしかして……その女房になる為に、宮仕えをしろと?」

「その、もしかしてじゃ!」

父・藤原照明は、扇をポンと叩いた。


「嫌でございます。」

即答する依楼葉に、父も母も、ガクッとくる。

「一切、考えないのか。」

「そうですよ、依楼葉。せっかくのお話なのに。もう少し考えてみてはどう?」

父も母も乗り気だけに、どうにかして依楼葉を、説得したい気分んだ。


「……気分が乗らないのです。このような気持ちで、宮仕えなど。ましてや梅壺の女御様の女房など、勤まるはずがございません。」