「……一旦、娘に聞いてみます。」

「おお!考えて頂けますか。」

どうせ何か目論見があるなら、乗った振りをして、こちらも美味い汁を味合わせて貰いたい。

大体、天下の帝が女御お一人しかおらぬと言うのが、そもそもの間違いなのだ。

美味い具合に、依楼葉に子ができれば、自分の地位は確固たる物になる。

帝だって、この太政大臣が外戚政治に出るのは、良い気分ではないはず。

それだったら、私の方がまだ、帝だって気分がいいと言うものだ。


「では、後程。」

「宜しくお願いしますよ、関白左大臣殿。」

こうして太政大臣・橘文弘は、また扇の下に不適な笑みを浮かべて、去って行った。

だがこちらもこちら。

依楼葉には、帝に気兼ねなく会えるとか、巧い事を言って言いくるめればいい。

なんて、いい話を貰ったのだ。

父・藤原照明は、扇の下で笑いが止まらなかった。