「ほう……女房が?これまた、珍しい。」

「どうやら、赤子ができたらしいです。」

二人は、顔を合わせるとお互い”やるな”と言う表情をした。

「その埋め合わせで、誰か知り合いを紹介しろと、うるさくて。」

「なんだ。そう言う事か。さすがは太政大臣。適任者を心得ている。」

「勘弁してください。」


冬の君は、結婚はしていなかったが、宮中では咲哉以上に、浮名を流している。

それが宮中の外でも、見受けられていて、父としてはその中で、女房に相応しい女子はいないかと、聞いてきたのだ。


「これまた、困った事でございます。私が恋する相手は、どれも皆線の細い者ばかり……とても宮仕えできるような者達ではありません。」

帝は、それを聞いて笑っている。

「お互い、苦労するな。」

「本当です。」

だが、その夜の宴は、久々に腹を割っての席になり、楽しい雰囲気は、夜中まで続くのだった。