友の恋が実るのは、聞いていて嬉しいものだ。

「それで?左大臣家に、通われているのですか?」

帝は、微笑みながら下を向いた。

「……何かあったのですか?」

「これっきりにしようと、言われてしまった。」

「えっ……」

冬の君は盃を持ちながら、茫然としてしまった。


若の姫君は、相手が帝だと、分かっていないのか。

いや、分かっているからこそ、これっきりにしようと、言ったのか。

どちらにしろこれでは、帝の気持ちのやり場がない。


「思い切って、入内させては?」

すると帝は、大笑いをした。

「さっきも、同じ事を言われた。」

冬の君は、首を傾げた。

「蔵人にですか?」

「まあ、そんなところだ。」


冬の君は、帝の盃に酒がない事を見計らって、酒を注いだ。

「冬の君……私はね、無意味に女御を迎えるのは、止めにしようと思うのだ。」

冬の君は、酒を一気に飲み干した。