「そうかも……しれぬな……」

そこへ、五条帝と仲がいい、冬の左大将・藤原崇文が、やってきた。

「これはこれは。今夜の帝は、恋患いをされている桜の君に、お成りになっている。」

帝は、依楼葉からの返歌を、胸元に隠した。


「調度よいところへ来てくれた。酒でも付き合わぬか?冬の君。」

「無論。そのつもりで参りました。」

帝が蔵人に、酒の準備をさせると、使いの者は一礼をして、どこかへ消えてしまった。

そして冬の左大将・藤原崇文は、帝の隣に座る。


「さて、何にお悩みなのでしょう。」

「ああ。そう言えば、まだ冬の君には、話ておらなかったが……」

そこで酒を持った蔵人が登場し、二人に酒を注いで回った。

「和歌の姫君と、枕を交わした。」

「なんと!」

冬の君は、嬉しそうに明るい顔をする。


依楼葉扮する春の中納言には、”桜の君ならば、相手に不足なし”とは言っていたが、やはり幼い頃からの友人同士。