「依楼葉。」

父が、依楼葉の前に座った。

「そなたの言う通りだ。子供が亡くなって、悲しまない親がいるか?父も母も、心から咲哉の死を、悼んでいるのだ。」

「本当ですか?」

「ああ、だがな。いつまでも、悼んでいる暇はないのだ。涙にくれて、これからの世を、忘れてはいけない。」

依楼葉は、手を強く握った。

「それは、咲哉の望んでいる事なのだと、父は思うのだ。」

依楼葉は、亡くなる前に言っていた、咲哉の言葉を思い出した。


- 依楼葉。私が亡くなったら、左大臣家を頼む。 -


目を瞑った依楼葉。

たった一人の兄妹である咲哉は、亡くなる前まで、この家の事を案じていた。

女である自分に、婿をとってくれとまで言ってまで、この家を潰さないようにと、頼んできた。


依楼葉は、決心した。


「父上様。刀を貸してくれませんか?」

「えっ?」

依楼葉は立ち上がると、父の懐から、刀を抜いた。