桃花は、あっさり認めた。

「でも、依楼葉殿が夫に成り代わったのは、この家を守る為なのでしょう?」

「うん、そうだよ。」

「ならば、私も夫の意志を受け継いで、この家を守っていこうと思います。髪をおろすのは、それからでも遅くはないかと。」

その冷静な感じは、どこか咲哉に似ていた。

夫婦は似てくると言うけれど、雰囲気まで似てくるなんて、依楼葉は少しだけ結婚と言うモノが、いいなと感じた。


そんな依楼葉と、桃花の姿を遠くから見守る、一人の公達がいた。

太政大臣・橘文弘だ。

「あそこにいる姫は?」

側にいる供の者に尋ねると、少しだけ首を傾げた。

「一人は、中納言殿の妻のように、お見受けしますが……もう一人は誰でしょうね。」

「……中納言殿には、双子の妹がいると言っていたな。どことなく、中納言殿に背格好が、似ていると思わぬか?」

橘文弘は、咲哉が女っぽいとは感じていたが、依楼葉が扮しているとは、知らない。