しばらくして、藤原咲哉の病死が、宮中に伝わった。

葬式には、太政大臣・橘文弘や、夏の右大将・橘厚弘、冬の左大将・藤原崇文等も参列した。

その中でも、藤原崇文はずっと泣いていた。


それを御帳台の中から眺めていた依楼葉。

姿を見せれば、また面倒な事になると思い、姿を隠していたのだが、藤原崇文の様子を見ると、そこまで友と思うてくれていたのかと、胸が痛くなった。


帰り際、藤原崇文は左大臣・藤原照明を見つけた。

「大叔父殿!」

藤原崇文は、照明の遠縁に当たる。

「ああ、冬の左大将……」

「うううっ!」

藤原崇文は、照明の顔を見るなり、また泣き始めた。


「春の中納言殿は……残念な事でした。」

「ああ。」

「私は……私は……心からの友になれると思うていたのに……突然逝ってしまわれて、悲しくて仕方ありません。」

「左大将殿……」

そんな事を言われると、本当に咲哉の葬式のようで、照明は胸が熱くなった。