「こんな時、太政大臣家が羨ましい……あそこの姫君は、今の帝の女御様。例え、跡継ぎがいなくてもお家は安泰だ。」

すると父と母、じっと依楼葉を見つめた。

「な、何ですか?」

依楼葉は、何となく体を後ろに引いた。

「いっそ……依楼葉を女御に……」

「ああ、あなた!それは、無理と言うものです。」

依楼葉の前で、父と母は、ああでもない、こうでもないと、これからの家の事ばかりを嘆いた。


「どうしてなのですか……」

依楼葉は、それが口惜しくてたまらなかった。

「依楼葉?」

「どうして!父上様も母上様も、咲哉が亡くなった事を、もっと嘆いてはくれぬのですか!」

その言葉に、二人共下を向く。

「咲哉が、この世からいなくなったのですよ?左大臣家の事や、西の方様とか、そんな事よりも、ご自分の子供が亡くなった事は、悲しくはないのですか!」

依楼葉は、涙を溢しながら叫んだ。