依楼葉の胸が、高鳴る。

「お上……」

「今は、桜の君と……お呼び下さい。」

依楼葉は益々、あの花見の祝宴で見つめった、桜の君を思い出す。


「あなたは、桜は散るものだから、余計に慕われると言った。」

依楼葉と桜の君は、見つめ合った。

「だが、私はそうは思わない。葉桜になる夏も、葉が散ってしまう秋も、雪に耐え忍ぶ冬も、あなたを想い続ける。」


二人はそのまま横になると、桜の君は、依楼葉の袴の紐を解いた。

「……怖くは、ありませんか?」

依楼葉は、顔を横に振った。

「最近の私は、あなたを想う歌ばかり、詠んでいます。この時を、どんなに望んだ事か……」

「和歌の姫君……」


桜の君と依楼葉は、それから今までの情を、交わし合った。

花見の祝宴で、お互い一目惚れし合った二人は、何度も何度も抱き合っては、離れがたい夜を過ごした。

気づけば空は、ほんのり明るくなっていた。