「分かった。そうしよう。」

父も母も、納得した。


しばらくして春の中納言は、病気の為に暇を貰った事が、宮中に知らされた。

「御身、お大事に。」

夏の右大将・橘厚弘は、一番早く駆けつけてくれた。

「有難うございます。」

これで会うのも最後だと思うと、寂しくなる。

「また、会える日を楽しみにしております。」

「はい……」

依楼葉は、心の中でさようならと、呟いた。


次にやってきたのは、冬の左大将・藤原崇文だった。

「大丈夫なのか?夏風邪か?」

寄り添って心配してくれる冬の左大将に、友になってよかったと思う依楼葉だった。

「冬の君。一つ、頼まれてくれないか?」

「何だ?」

「私に万が一の事があったら、弟の秋の中納言を、宜しく頼む。」

冬の左大将は、口を開けて茫然とした。

「そのような事、申すでない!必ず治って、宮中に戻ってくる!」

依楼葉は、冬の君の肩をいつまでも、揺らしていた。