更に依楼葉は、もう一つの人生を、終わらせようとしていた。

「父上様、母上様。依楼葉は、元の姿に戻ろうと思います。」

「依楼葉……」

父と母は、顔を見合わせた後、下を向いた。


「隼也はもう、関白左大臣家の跡取りとして、申し分ございません。私が女に戻っても、この家が潰れることはないでしょう。」

父が、依楼葉の意見に、うんうんと頷く。

「では、もう……」

「いえ、今すぐにとはいきませんので、２週間程はまだ男の成りをしておきます。」

「そうか……」

依楼葉の男の成りを見れないとなると、ふと寂しさがこみあげる。


「そして、咲哉を病死にして頂いて、今度は本当に葬式をあげてやりたいのです。」

依楼葉の言葉に、桃花が涙ぐむ。

「有難いお言葉……これであの人も、報われると思います。」

涙ぐんだ桃花の手を、隼也が握った。

二人は見つめ合い、桃花の涙を隼也が拭う。

二人はもう、夫婦のようだ。