隼也は、真っすぐに依楼葉を見つめた。

「桃花殿だから、妻に欲しいのです。そうでなければ、同じ事情であっても、兄の妻を欲しいとは思いません。」

隣で聞いている桃花は、ほんのり顔が赤くなっている。

「では、桃花殿を恋い慕っていると言うのだね。」

「この気持ちが、恋なのかはまだ分かりませんが……少なくても、桃花殿と離れたくはありません。」


そこでやっと依楼葉は、微笑んだ。

「桃花殿も、同じ気持ちかな。」

「はい……」

桃花の目に、涙で光った。

「私は、咲哉殿がいなくなって、依楼葉様が代わりをしていると知っても、それでいいと思いました。このまま、時の流れに身を任せるのも、一つの生き方だと。そんな考えを変えてくれたのが、隼也殿でした。隼也殿だからこそ、再び縁を持とうと思ったのです。」

依楼葉は微笑みながら、桃花の手を取った。


「今度こそ、幸せに……」

「はい……」

こうして依楼葉と桃花は、夫婦の縁を終わらせた。