「そんな!」

東の方は、オロオロとし始めた。

左大臣の職を失えば、無職になる。

この先、家族と使用人を、どうやって養っていけばよいのか、分からなくなる。


「い、今すぐ!依楼葉に、婿を探そう!」

父は手を打った。

「ですが!目ぼしい方は、いらっしゃるのですか?これまでのご縁とは、訳が違います。」

そうなのだ。

今迄は、名のある貴族であれば、依楼葉の求婚者として、受け入れていた。

しかし、これからは違う。

曲りなりにも、三大臣家の一つ、左大臣家を背負う若者を、見つけなければならないのだ。


「右大臣家と太政大臣家は、共に姫君ばかり。婿をとるなど、どこからとお考えなのですか?」

「ああ!」

父は、頭を抱えてしまった。

「しかも、右大臣家は咲哉に嫁がせた西の方のお陰で、もっているようなもの。咲哉が亡くなったとなれば、右大臣家も危ない。」

今度は東の方まで、頭を抱えてしまった。