「いやあ、ここまで早く、隼也が出世してくれるとは、思ってもみなかった。」

関白左大臣家は、咲哉の妻・桃花も含めて、家族皆で、大いに盛り上がった。

話題の中心である隼也も、満足そうだった。


「そうだ。出世したからには、隼也も妻を迎えなければならないね。」

依楼葉は、隼也の背中に手を添えた。

「その事なのですが……」

隼也は、依楼葉の方を向いた。


「兄上には、謝らなければなりません。」

「えっ?」

その時だった。

咲哉の妻のはずの桃花が、隼也の隣に座る。

「どうしたのだ、桃花。」

依楼葉が話しかけても、桃花は返事をしない。


「実は桃花殿を、私の妻に欲しいのです。」

「ええっ!?」

これには同席していた、父・藤原照明も母・東の方も驚いた。

「隼也……お、お、おまえは……桃花が、咲哉の妻だと知っていて、兄から奪ったと言うのか!」

父は動揺しながら、隼也を責めた。