「隼也を、宮中に出仕させる。まずは、蔵人からだな。」

蔵人は、帝の膳や給仕、秘書的な役割をしていた。

咲哉も、中納言になる前は、六位蔵人から始め、瞬く間に中納言となった。


「隼也も、六位蔵人から入るのですか?」

依楼葉は、関白左大臣の子息であれば当然だと言う風だ。

「いや、非蔵人からにしようと思う。」

「……見習いから、始めるのですか?」

依楼葉は、少し信じられなかった。


「1年かかるだろうと思った習い事も、3か月で得る程の才能と努力の持ち主だからこそ、大切に育てたいのだ。それに、今まで田舎で育ったからのう。下手に六位蔵人に取り立て、恥でもかかせたら可哀そうでな。」

父は父なりの、思いやりと配慮をしているのだなと、依楼葉は嬉しくなった。

又、そう思わせる隼也も、すごいと思った。


いつだったか、机に向かって寝ていた隼也の姿が浮かぶ。

あの努力が実っただと思うと、それも嬉しかった。