慌てる隼也に、依楼葉は可愛らしさを覚えた。

「どうだろう。時々、妹が使っていた香を、炊き詰めてみるんだ。」

「へえ……そうなのですね。と言うよりも、姉君様もいらっしゃるんですね。」

依楼葉は、教えていなかったのかと、ふと思った。

「ああ、そうだよ。双子でね。今、親戚の家にいるのだ。」

「親戚の家にですか。道理で、姿が見えないわけですね。」

依楼葉は隼矢に、少しだけ近づけたような気がした。


「ところで、和歌や漢詩の習い事は、進んでいるかな。」

「はい。こういう雅な物は、私に向いているのかなと思っていましたが、習ってみると興味深いです。」

隼也のその瞳は、キラキラと輝いていた。

これは宮中に出仕するのも、早いかもしれないと、依楼葉は思った。


そして、依楼葉の思った通り、隼也はメキメキと習い事が上達し、武芸は依楼葉を凌ぐ程になった。

それを見た父も、考えたよりも早く、隼也を宮中に出仕させる事を決めた。