「はははっ!その意気じゃ!」

右大臣・藤原武徳は、誤って依楼葉の左肩を、触ってしまった。

「……っ!」

「あっ、すまぬ。」

左肩に痛みが走り、慌てて左肩を押さえる依楼葉。


「大事ないか?」

「ええ……お気になさいますな。」

まだ少し痛みが残るが、今は我慢するしかない。

「本当にすまぬ。わざとはないのじゃ。」

「はい。承知しております。」

その柔らかくで優しげな態度に、右大臣・藤原武徳も、魅入られてしまう。


そして、いよいよ。

五条帝の御前に、二人は姿を現した。

依楼葉を見ても、五条帝は眉一つ、表情を変えない。

依楼葉も、何事もなかったように、右大臣・藤原武徳の斜め後ろに座った。


「帝にあらせましては、ご機嫌麗しゅう。」

「ああ。右大臣も、変わらぬようで何よりだ。」

すると五条帝は、ちらっと依楼葉を見た。

「春の中納言。肩の傷は、癒えたか?」