一時程しただろうか。

依楼葉は、目を覚ました。

父の天幕に運ばれて、手当されたところまでは、覚えているのだが、それ後は眠ってしまったようだ。

依楼葉は父を探したが、近くにいない。

「父上?」

起き上がろうとする依楼葉の背中に、誰かが手を添えた。


「あ、有難う……」

てっきり父か、使用人だと思っていた依楼葉は、その顔を見て、声が出る程驚いた。

「お上!?……」

「目を覚まされたか。」

あのお上が、目の前にいる。

だが先程、女だと知られそうになった上に、この状況は非常にまずい。


「今は、会いたくなかったと言う、お顔ですね。」

依楼葉は、顔を背けた。

だが五条帝は、そんな依楼葉を抱き寄せた。

「私は……会いたかった……会いたくて会いたくて……仕方がなかった。」

すぐそこに、会いたかった桜の君がいる。

「なぜ、このような恰好をしているかは、私は問いません。ただ……」