「春の君は、ご無事か!?」

父の天幕に運ばれた事を、二人は聞きつけたのだ。

「私が付いていながら、申し訳ない!」

夏の右大将・橘厚弘も、これには焦っているようだ。


「あわわ……あの二人まで……」

帝に知られた上に、左右の大将にまで知られたら、今度こそ左大臣家は終わりだ。

「父上殿。手当が終わっていると。春の中納言は大事ないと、あの二人に伝えて頂けないか。」

「は、はい!」

父・藤原照明は、慌てふためいているせいか、五条帝に父上殿と呼ばれている事に、気づかない。

「そして……中納言と、二人きりにさせて頂けないだろうか。」

「えっ……」

父・藤原照明と、五条帝は顔を見合わせた。

五条帝は、未だに依楼葉の手を握っている。


「は、はい。」

いつの間に二人は、そんな仲に?

これはひょっとすると、入内もあり得る?

父・藤原照明はドキドキしながら、天幕から出た。