「お上!お上直々に、手当をするなど!?」

父・藤原照明は、帝を止めようとした。

「よい。狩場では、帝も臣下もない。傷を負った者は、側にいた者が手当する。当たり前のことだ。」

五条帝は、依楼葉の衣を脱がせて、肩を出した。


華奢で、細い肩。

これで男に混じって、狩りをしていたと言うのか。


「染みますぞ。」

五条帝をお酒を口に含むと、依楼葉のパックリと割れた肩に、それを吹きかけた。

すると使用人が持っていた布を、素早く肩に巻いた。

「うっ……うぅぅぅ……」

唸る依楼葉の手を、五条帝が握る。

「安心召され。手当は無事、終わりましたぞ。」


その様子を見ていた父・藤原照明は、わなわなと震えあがった。

知られた。

依楼葉が、藤原咲哉の振りをしていた事を。

もしかしたら、関白左大臣の位を、取り上げられるかもしれない。


しばらくして、遠くから夏の右大将・橘厚弘と、冬の左大将・藤原崇文の声がしてきた。