「大丈夫か!?」

「……ああ。」

矢が突き刺さった痛みで、依楼葉は顔が真っ白だ。

「おのれ!帝の臣下に、矢を向けるとは!」

冬の君は、駆けつけた蔵人達と一緒に、曲者を追いかけて行った。


代わりに依楼葉の側に来たのは、五条帝だった。

馬で依楼葉の横に並び、左肩に突き刺さった矢を抜いた。

「腕を貸しなさい。血止めをしよう。」

依楼葉は、遠くなる意識の中、五条帝に腕を差し出す。

「肩を出すのに、衣を脱がすぞ。」

五条帝のその一言に、依楼葉はハッとした。


そんな事をしたら、自分が女だと言う事が、知られてしまう。

依楼葉は咄嗟に、腕を引いた。

「春の……中納言?」

「あの……申し訳ございません。お上に、お手を煩わせるなんて。」

依楼葉は何とか、意識を保とうとした。

「そんな事、言っている場合か!血が多く流れて、命を落としたらどうする!?」

「もう少し先に行けば、父の天幕がございます。そこで、手当してもらいますので。」