しばらくしても、夏の右大将の姿が見えない。

「場所を、間違えてしまったのか?」

依楼葉が、引き返そうとした時だ。


どこからか、矢が飛んできて、目の前を通り過ぎた。

依楼葉の息が、一瞬止まった。

流れ矢?

それとも、自分を狙って?


依楼葉は何も考えずに、馬を走らせた。

流れ矢であってほしい。

だがその願いは、叶わなかった。

次から次へと、矢は依楼葉に向かって、飛んでくるのだ。


「何者なんだ!」

依楼葉は、馬を走らせるだけで、精一杯だ。

しばらくして、依楼葉は開けた場所に、飛び出た。

「春の君!」

ハッと声の方を向くと、冬の君がいる。

その横には、五条帝の姿が!!


「お上!お逃げ下さい!」

依楼葉の一声に、冬の君も五条帝も固まる。

「曲者が、近づいております!」

そう叫んだ時だ。

依楼葉の左肩に、矢が突き刺さった。


「春の君!」

冬の君が、近づいて来た。