「はい!」

依楼葉も馬に乗り、夏の右大将・橘厚弘について行った。


五条帝が申す通り、夏の右大将は狩りの名人だった。

直ぐに獲物を見つけると、真っすぐに弓矢を射て、一発で仕留めてしまう。

「すごい……」

依楼葉は、茫然とその様子を見ていた。

「何の此れしきの事。直ぐに春の中納言殿も、できるようになりますよ。」

夏の右大将は、優しく微笑んだ。


「次は、春の中納言殿の番ですよ。」

「えっ!私が!?」

「なに、今見ていた通りに、致せばよろしいのですよ。」

夏の右大将の言葉に、依楼葉も力が湧いてきた。

「では……」

依楼葉は駆け出すと、早速獲物を見つけた。

「あそこか……」

弓矢を引くが、獲物に的が定まらない。

やはり実際の狩りと、鍛錬とは違うのか。


「鍛錬を、思い出せ!」

どこからかの声に、依楼葉は鍛錬の時に使う的を思い出す。

的と獲物が、重なった時、依楼葉は矢を射た。