「ああ。久しぶりだな、冬の君。」

「これは益々、面白くなってきた。」

二人はまるで、兄弟のようだ。


「帝と冬の君は、仲がいいですね。」

依楼葉は、一緒に回る夏の右大将に、聞いた。

「ああ。なにせ、帝が東宮になられる前からの、仲だからな。もう今は、桜の君と呼ぶのも、冬の左大将だけだ。」

そう言う夏の右大将・橘厚弘も、帝とは仲がいい。

この前、五条帝に拝謁した時に、依楼葉はそう思った。


「……夏の右大将殿も、帝と近しい間柄ですよね。」

「帝とは遠縁に、当たりますからね。ただ私と帝が、近しいと感じるのは、友人と言うよりも、臣下として私を信頼されてるからだと、思いますよ。」

涼しげな目元で微笑まれると、気後れしてしまう依楼葉。

世の中の人は自分を見て、艶やかだと言ってくれるけれど、夏の右大将の方が、余程艶やかだと、依楼葉は思う。

「さあ、行きますか?」

夏の右大将・橘厚弘が、馬に乗った。