沿道では都の人々が、五条帝の行幸を見て、感激している。

「見て!帝の行幸だよ。」

「相変わらず、側には美しい公達がいるなぁ。」


その中でも、皆の目を奪ったのは、やはり依楼葉扮する、藤原咲哉だった。

「あれが、噂の春の中納言様?」

「なんて艶やかな。目の保養にいいよ。」

行く先々で、依楼葉は人々の噂になった。


「さすがは、春の中納言殿。魅了するのは、女房達だけではなかったようですね。」

夏の君・橘厚弘が依楼葉の元まで、やってきた。

「いえ。私など、とても……」

これが八方美人の咲哉だったら、とんでもない事になるなと、依楼葉は思った。


「ところで、春の中納言殿は狩りは、お好きかな。」

「どうでしょう。弓矢の稽古はしていましたが、狩りは初めてでございまして。」

「ほう……それは、楽しみがまた一つ、増えましたね。」

「……そうですね。」

依楼葉が微笑むと、橘厚弘も微笑んだ。