しばらくして、その野行幸の時が、やってきた。

他の公卿達と同じ衣装を着た依楼葉が、馬の元へやってきた。

「春の中納言殿。今日は、宜しくお願い申す。」

「夏の右大将殿。」

この前、帝の前で会った時以来だが、依楼葉は何故か、この公達と仲良くなれる気がしていた。


「まあ、春の中納言殿よ!」

「こっち向いて!」

遠くから女御達が、依楼葉目がけて手を振る。

「さすが、春の中納言殿。このような時まで、女房達を魅了するとは。」

「はははっ……放っておきましょう。」

咲哉と違って依楼葉は、手を振られても、うっとおしいとしか思えない。


「これは、夏の右大将殿!春の中納言殿!」

遅れて、冬の君・藤原崇文が、やってきた。

「おお。春の中納言殿は、そういう衣装も、お似合いになる。」

「あ、有難うございます。」

依楼葉を気に入っていると言う、藤原崇文。

何となく、距離を置く依楼葉だった。