数日後、帝の元へ太政大臣・橘文弘、関白左大臣・藤原照明・右大臣・藤原武徳が集まった。

「そろそろ、野行幸を行おうと思う。」

「おお!」

帝の一声に、蔵人達も混じって、感嘆の声を上げた。

「それは宜しい。皆も、喜ぶでしょう。」

関白左大臣も右大臣も、心躍っている。

「狩場までの行列は、若者を腰の左右に随行させましょう。」

「ああ、それもよい。で?どの若者に、随行させましょう?」


すると太政大臣・橘文弘が、扇を広げた。

「一人は冬の君、左大将・藤原崇文殿は、如何でしょう。」

崇文の叔父・右大臣の藤原武徳は、鼻を高くする。

「では、もう一人は夏の右大将殿ですかな。」

関白左大臣が、笑顔で言った。

「いえ……我が息子は、帝の横に。もう一人は、関白左大臣家の春の中納言殿に。」

これには、依楼葉の父・藤原照明も驚いた。


なにせ春の中納言が、文武両道と謳われたのは、咲哉が生きている時だ。