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――そして、その年のクリスマスイブの夜。わたしの家では、ささやかな――本当にささやかなクリスマスパーティーが行われた。
いうなれば、ホームパーティーに毛が生えた程度のもので(少なくとも、篠沢家の人間はそう思っていた)、招待したのも里歩と彼――貢くらいだった。
「――絢乃、メリクリ! 今日はお招きありがと!」
「里歩、いらっしゃい! どうぞ上がって!」
「うん、おジャマしま~す! ――あ、コレ。クリスマスっていったらやっぱコレでしょ」
「わぁ、ありがとう。食卓が賑やかになるわ」
わたしは、フライドチキンのパーティーパックを手土産にしてやって来た里歩を、笑顔で出迎えた。
父が息を引き取るまでは、わたしはなるべく笑顔でいようと決めていたのだ。少なくとも、里歩や家族以外の人の前では。
「――クリスマスケーキね、我ながら会心の出来だと思うの。パパや里歩に食べてもらうのが楽しみだわ!」
「そうなんだ? あたしも待ち遠しいなー」
でも、里歩はわたしのはしゃぎっぷりに多少のムリを感じ取ったらしく。
「絢乃、アンタ相当突っぱってるでしょ? あたしの前では強がんないでさ、泣きたいときは遠慮なく泣いていいんだからね」
「……どうして分かったの?」
「アンタねぇ、あたしが何年アンタの親友やってると思ってんの? 事情だって分かってるんだし、それくらい察して当然じゃん」
「うん、ありがと。ホントに泣きたくなったら、そうするわ」
わたしは本当に、頼もしい親友を持てたなと思う。彼女はそれまでにも、何度もわたしを助けてくれていたから。
あの数ヶ月間、わたしの精神的な支えになってくれたのは彼と、間違いなく里歩だった。
――里歩をリビングまで送っていくと、またもインターフォンが鳴った。ちなみにセキュリティーの関係で、我が家のインターフォンはモニター付きである。
「はい、どなた様でございましょう?」
史子さんが、応答ボタンを押しながらモニター画面を確認した。
『あの……、こんばんは。僕は篠沢商事の社員で、桐島といいます。こちらの絢乃お嬢さまからご招待を頂きまして』
「お嬢さまが……。少々お待ち下さいませ」
「えっ、桐島さん!? 待って、史子さん。わたしが応対するわ」
まだリビングにいたわたしは彼女に代わってもらい、インターフォンで応対した。
「桐島さん! よく来てくれたわね。どうぞ、上がって。――車は、車庫のどこに停めてもらっても構わないから」
『えっ、絢乃さん!? ――ああ、はい。では、お言葉に甘えて』
突然、応対者がわたしに変わったことには驚いていたものの、彼はインターフォン越しに声を弾ませていた。