「そっか……。そりゃあ心配だよねぇ。連絡待ってるだけっていうのも落ち着かないだろうし……」
「うん……」
わたしは頷いた。里歩がわたしのその時の気持ちを理解しようとしてくれたのが、ものすごく嬉しかったのだ。
「でもさぁ、絢乃がついてったところでさ、お医者さんからお父さんの余命宣告とかされて冷静でいられる?」
「う~ん……、それは…………多分ムリね」
「でしょ? だったらさ、多少落ち着かなくても学校行ってる方が気が紛れていいんじゃないの? あたしもついてるしさ」
独りで重い事情を抱えて悩んでいるよりは、こうして励ましたり慰めてくれる親友が側にいてくれる方が気が楽かもしれない。わたしはそう思った。
「……うん、そうかもね。桐島さんにも昨夜、電話で同じようなこと言われたわ」
「桐島さん? 誰よそれ」
独りごちたつもりだったのが、里歩にはバッチリ聞こえていたらしい。彼女は突然耳に入ってきたその聞き覚えのない名前に、眉をひそめた。
「パパの、会社の人。検査を勧めてくれたのも彼なの。まだ二十代半ばくらい……だったかな。すごく誠実な人でね、パーティーの帰りも、車で送ってくれたの。ステキな人だったなぁ」
彼のことを客観的に話そうと頑張ってみたけれど、わたしの口から出てくる言葉は彼の魅力的な面ばかりだった。
「ふぅ~ん? 昨日やっぱり、いい男性に出会ってたんじゃん♪ ねえねえ、イケメンだった? 背はどれくらい?」
するとすかさず、彼女はこの話題に食いついてきた。わたしから恋バナの気配を感じ取ったらしい。
「ええっ!? ……えっと、そうね……イケメン……だと思う。爽やかで優しそうな顔だった。背は……、百八十センチもないんじゃないかしら。でも、けっこう長身な方だったわ」
わたしがしどろもどろに話す内容を、向かいに立っている里歩はうんうん、と頷きながら興味津々で聞いていた。
「なるほどねぇ。――んで? 連絡先も交換してるってことは、アンタもその人とお付き合いしたいとか思ってるワケ?」
「そ……っ、そんなのまだ分かんないわよ! 連絡先を交換したのは、パパのことがあったからで……。それに、送ってもらったから、いつかはちゃんとお礼がしたいな……と思って」
実は、「また彼に会えたらいいな」と思っているなんてことは、この時は口が裂けても言えなかった。
「……っていうか! だいたい、パパが倒れて大変な時に、こんな話で盛り上がるなんて不謹慎よ!」
そして、恋バナなんてしている場合じゃないことを思い出したわたしは、胸のざわめきをごまかすように里歩をたしなめた。
「うん……」
わたしは頷いた。里歩がわたしのその時の気持ちを理解しようとしてくれたのが、ものすごく嬉しかったのだ。
「でもさぁ、絢乃がついてったところでさ、お医者さんからお父さんの余命宣告とかされて冷静でいられる?」
「う~ん……、それは…………多分ムリね」
「でしょ? だったらさ、多少落ち着かなくても学校行ってる方が気が紛れていいんじゃないの? あたしもついてるしさ」
独りで重い事情を抱えて悩んでいるよりは、こうして励ましたり慰めてくれる親友が側にいてくれる方が気が楽かもしれない。わたしはそう思った。
「……うん、そうかもね。桐島さんにも昨夜、電話で同じようなこと言われたわ」
「桐島さん? 誰よそれ」
独りごちたつもりだったのが、里歩にはバッチリ聞こえていたらしい。彼女は突然耳に入ってきたその聞き覚えのない名前に、眉をひそめた。
「パパの、会社の人。検査を勧めてくれたのも彼なの。まだ二十代半ばくらい……だったかな。すごく誠実な人でね、パーティーの帰りも、車で送ってくれたの。ステキな人だったなぁ」
彼のことを客観的に話そうと頑張ってみたけれど、わたしの口から出てくる言葉は彼の魅力的な面ばかりだった。
「ふぅ~ん? 昨日やっぱり、いい男性に出会ってたんじゃん♪ ねえねえ、イケメンだった? 背はどれくらい?」
するとすかさず、彼女はこの話題に食いついてきた。わたしから恋バナの気配を感じ取ったらしい。
「ええっ!? ……えっと、そうね……イケメン……だと思う。爽やかで優しそうな顔だった。背は……、百八十センチもないんじゃないかしら。でも、けっこう長身な方だったわ」
わたしがしどろもどろに話す内容を、向かいに立っている里歩はうんうん、と頷きながら興味津々で聞いていた。
「なるほどねぇ。――んで? 連絡先も交換してるってことは、アンタもその人とお付き合いしたいとか思ってるワケ?」
「そ……っ、そんなのまだ分かんないわよ! 連絡先を交換したのは、パパのことがあったからで……。それに、送ってもらったから、いつかはちゃんとお礼がしたいな……と思って」
実は、「また彼に会えたらいいな」と思っているなんてことは、この時は口が裂けても言えなかった。
「……っていうか! だいたい、パパが倒れて大変な時に、こんな話で盛り上がるなんて不謹慎よ!」
そして、恋バナなんてしている場合じゃないことを思い出したわたしは、胸のざわめきをごまかすように里歩をたしなめた。