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 ――その翌日。わたしは高校三年生になった。
 里歩とも同じクラスになれたし、唯ちゃんとクラスメイトになれたのもこれが初めてだった。

 高校三年生といえば、世間一般では受験生。ということで当然、お昼休みにも進路の話がメインに出てきた。
 里歩は体育教師を目指すために、体育系の大学への進学。唯ちゃんはアニメ好きな部分を生かしてアニメーション系の専門学校へ進み、クリエイターを目指すらしい。

 わたしはというと、すでに大財閥の総帥であり、大企業の経営者であったことから大学へは進学せず、経営者に専念することにした。

『あら、もったいない! 大学に進んで本格的に経営の勉強をしてもいいのよ』

 わたしがその決意を語った時の、母の反応はこうだった。

 確かに母の言ったとおり、それもできたかもしれない。我が家の経済力なら学費に困ることもなかっただろうし、登下校の時間が決められている高校までと違って、大学では学習のスケジュールが自分で決められるので時間の自由もきく。高校時代よりは、〝二足のワラジ〟生活も送りやすくなっていただろう。

 でも、わたしはそれを選ばなかった。教室で勉強するよりも、一秒でも長く会社にいたいと思っていたから。会社が大好きで、社員のみなさんも大好きで、そして……。
 大好きな彼と、一秒でも長く一緒の時間を過ごしたかったから。――まあ、こんな個人的な理由では、ちょっと不純かもしれないけれど。

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 ――それから一ヶ月が経ち、五月の大型連休に入ったある日。わたしと彼は二人で恵比寿まで出かけていた。
 デート……といえばデートなのかもしれないけれど、目的は二人で遊ぶことではなくて、わたしから誕生日の近かった彼への贈り物。

「――あっ、絢乃タン! 偶然だねー」

「唯ちゃん! こんにちは」

 彼の車で来て、彼が駅前パーキングに車を停めに行っているのを駅前で待っていたわたしに、唯ちゃんが手を振ってくれた。
 彼女はいわゆる〝オタク少女〟で、人を呼ぶ時の呼び方も独特で個性的だ。でも、彼女らしくて可愛い呼び方だな、とわたしは気に入っている。

「今日はオシャレしてどうしたの? お出かけ?」

「うん! 今日は初めてのデートなんだぁ☆ 映画観に行くんだよ、アニメなんだけど」

 唯ちゃんはその少し前、大好きなアニメの主人公にそっくりな一歳年上の大学生とお付き合いを始めたと言っていた。デートのお相手は、その彼だろう。

「そうなの? いいわねぇ。わたしと彼も、初デートは映画だったのよ。恋愛モノだったけど。……やっぱりそうなるわよね」

 彼女の答えに、わたしは苦笑いした。
 初めてのデートでの行き先というのは、たいてい決まっている。テーマパーク、映画、水族館……まあ、こんなところだろう。