当然の結果として、会場内はざわついた。けれど、わたしはそれも想定済みだった。
『本日ご出席下さった皆さまには、娘であるわたしが父と母に成り代わりましてお礼申し上げます。それと同時に、この場をお騒がせしてしまったことも併せてお詫びいたします。お帰りの際は、ハイヤーを何台も手配しておりますので、そちらをご利用ください。皆さま、お気をつけてお帰り下さい』
マイクを置いて席に戻ると、わたしは重荷から解放された脱力感からか、ふーーーーっと重く長いため息をついた。
「――お疲れさまです、絢乃さん。喉渇いたでしょう? これどうぞ」
そんなわたしの前に、彼がウーロン茶の入ったグラスを置いてくれた。わたしの挨拶の間に、ドリンクバーで淹れてきてくれたらしい。
「あ……、ありがとう。いただきます」
冷たいウーロン茶を一気に飲み干すと、わたしは生き返った。
「皆さん、ざわついてましたね。まあ、仕方ないといえば仕方ないですけど」
「うん。でも、これでわたしの務めは無事に終わったわ。あとは帰って、パパの様子をママから聞くだけ」
父は今、どんな具合なのだろう? ――わたしはその時、父が心配でたまらなかった。一刻も早く、自由ヶ丘の家にすっ飛んで帰りたかった。
「――ところで、絢乃さんはどうやってお帰りになるんですか? ハイヤーで? それともお迎えが来るんですか?」
「ああ……。そういえば、そこまで考えてなかったわ」
彼に訊かれるまで、自分が帰宅する手段のことをすっかり忘れていた。
ハイヤーは多分、お客様たちのために手配していたはずだし。寺田さんに連絡して来てもらうことも考えたけれど、それは二度手間になってしまうので何だか彼に申し訳ないなと思った。
「とりあえず、大通りに出てタクシーでもつかまえるわ。どうにかなるでしょう」
「自由ヶ丘までタクシーなんてもったいないです! あの……、僕の車でよければお送りしましょうか?」
「……え? でも貴方、車は――」
「ああ、大丈夫です。僕は下戸なんで、飲んでませんから」
飲酒していたら運転は……と言いかけたわたしに、彼はニッコリ笑ってそう言った。そういえば、彼が飲んでいたのはウーロン茶だったような気がする。
「ああでも、立派な乗用車とかじゃなくて、軽自動車なんですけど。それでもよければ……」
『本日ご出席下さった皆さまには、娘であるわたしが父と母に成り代わりましてお礼申し上げます。それと同時に、この場をお騒がせしてしまったことも併せてお詫びいたします。お帰りの際は、ハイヤーを何台も手配しておりますので、そちらをご利用ください。皆さま、お気をつけてお帰り下さい』
マイクを置いて席に戻ると、わたしは重荷から解放された脱力感からか、ふーーーーっと重く長いため息をついた。
「――お疲れさまです、絢乃さん。喉渇いたでしょう? これどうぞ」
そんなわたしの前に、彼がウーロン茶の入ったグラスを置いてくれた。わたしの挨拶の間に、ドリンクバーで淹れてきてくれたらしい。
「あ……、ありがとう。いただきます」
冷たいウーロン茶を一気に飲み干すと、わたしは生き返った。
「皆さん、ざわついてましたね。まあ、仕方ないといえば仕方ないですけど」
「うん。でも、これでわたしの務めは無事に終わったわ。あとは帰って、パパの様子をママから聞くだけ」
父は今、どんな具合なのだろう? ――わたしはその時、父が心配でたまらなかった。一刻も早く、自由ヶ丘の家にすっ飛んで帰りたかった。
「――ところで、絢乃さんはどうやってお帰りになるんですか? ハイヤーで? それともお迎えが来るんですか?」
「ああ……。そういえば、そこまで考えてなかったわ」
彼に訊かれるまで、自分が帰宅する手段のことをすっかり忘れていた。
ハイヤーは多分、お客様たちのために手配していたはずだし。寺田さんに連絡して来てもらうことも考えたけれど、それは二度手間になってしまうので何だか彼に申し訳ないなと思った。
「とりあえず、大通りに出てタクシーでもつかまえるわ。どうにかなるでしょう」
「自由ヶ丘までタクシーなんてもったいないです! あの……、僕の車でよければお送りしましょうか?」
「……え? でも貴方、車は――」
「ああ、大丈夫です。僕は下戸なんで、飲んでませんから」
飲酒していたら運転は……と言いかけたわたしに、彼はニッコリ笑ってそう言った。そういえば、彼が飲んでいたのはウーロン茶だったような気がする。
「ああでも、立派な乗用車とかじゃなくて、軽自動車なんですけど。それでもよければ……」