――里歩には、夕食後にメッセージアプリで報告した。

〈絢乃、よかったじゃん! おめー\(^o^)/
 っていうか、初恋で初カレシってスゴくない? あたし羨ましいわ…。
 学校始まったら、経過報告よろ☆〉

 彼女からは、こんな返信とともに「バンザイ」をしている可愛いネコのスタンプがが送られてきた。
 ちなみに、「羨ましい」と書かれてはいたけれど、彼女にも二歳年上の専門学校生の彼氏がいるらしい。その当時で、交際を始めてまだ数ヶ月と聞いた気がする。

〈羨ましいって…。里歩は彼とどうなの?〉

 と、わたしから送ってみたところ。

〈電話とかメッセージのやり取りは続いてるけど、なかなかデートできないのが悩み(´・ω・`)
 桐島さんとほぼ毎日顔合わせられるアンタがうらやま~〉

 という、彼女なりに淋しがっているような返信があった。
 好きな人とほとんど毎日会えることは幸せなことなのだと、わたしは改めて気づかされたのだった――。

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 ――話は、会議のことに戻る。 

「――では、配布した資料をご覧下さい。山崎さんはご存じだと思いますが、これらはすべて、半年前から遡って現在に至るまでに総務課の社員のみなさんから人事部の労務担当に寄せられた、島谷課長からのパワハラの相談内容です」

 わたしたち三人は、一斉に資料をめくり始めた。一部足りなかったので、彼はわたしの分の資料を横から覗き込んでいた。

 A4用紙五枚分にわたる資料には、島谷課長からの嫌がらせ行為がいかに悪質かがビッシリと書かれていた。
 この資料は、この日の朝イチで山崎さんが責任を持ってプリントアウトしておくと請け負ってくれていたのだ。人事部で預かっていた案件だけに、責任感の強い彼はこの件に積極的に関わろうとしてくれていたのだった。

「これは……、あまりにもひどいですね。ここまで悪質だと、僕もどう考えていいものか……。桐島くん、君も被害者の一人だと聞いたが、よくこんなことに耐えられたね。そして、よく立ち直ってくれた」

 村上さんは、内容にザッと目を通して呻くように言った。そして、この会議の中では一番の当事者だった彼――貢のことを(いた)わってくれた。

「僕は運がよかったんだと思います。一時は退職も考えましたが、会長に救われて、思い留まることができたんです。ですから、僕が今もこの会社で働けているのは、ひとえに会長のおかげです」

「わたしも驚きました。パワハラは一時的なものだと思ってたのに、現在進行形で続いてるなんて……。――あの、村上さん、山崎さん。この件について、父はどの程度把握していたんでしょうか?」