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 翌日は、初めて朝イチでの出社だった。
 もちろん、彼は八時半に家まで迎えに来てくれて、「おはようございます!」とこれまでにないくらいの爽やかさで挨拶してくれた。
 前日にわたしの〝彼氏〟になったばかりの彼。朝一番で彼の顔が見られただけで、わたしはその日一日がいい日になりそうな気がして幸せだった。

「――絢乃さん、今日のお召し物もステキですね」

「ありがと。今日は大事な会議だから、いつもより気合入れてきたの」

 この日のわたしは、淡いピンク色のスーツ姿。スカートはタイトではなくフレアーで、インナーにはレース生地のオフホワイトのカットソーを合わせた。ちなみにパンプスは、いつもピンク色のハイヒールである。

「……あの、お誕生日に欲しいものとかって、何かあります?」

 おもむろに、彼が訊ねてきた。どうやら、プレゼント選びを慎重にしたいらしかった。

「えっ? ……う~ん、急に訊かれても。特にコレといって思い浮かぶものは……」

 わたしはあまり物欲がない方だったので(幼い頃から有り余るほどの物に囲まれて育ってきたからである)、「欲しいもの」と訊かれても悩ましかったのだ。

「そうですか……。あ、じゃあ質問変えます! 絢乃さんって、アクセサリーとか興味ない方ですか? 着けてらっしゃるところ、あまり拝見したことがないんですけど」

「ない……こともないけど、ビジネスの時に着けるものじゃないって思ってるからかしら。シンプルなものなら、着けてても不自然じゃないかもね」

「うーん……、なるほど」

 彼が納得したのか、唸っていたのか、その時のわたしには判断がつかなかった。
 でも、彼はきっとわたしが喜ぶプレゼントを真剣に考えてくれているのだと思うと、わたしはその喜びで胸が高鳴った。

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「――おはようございます、会長」

「おはようございます」

 わたしと彼が会長室へ上がっていくと、すでに村上さんと山崎さんは会議の席に着いていた。
 村上さんの秘書である小川さんも、山崎さんの秘書である上村(うえむら)さんも、その場には来ていなかった。

「おはようございます。――さて、会議を始めますが、この会議には桐島さんも入ってもらうことにしました。彼も、この案件の当事者ですので」

「……えっ? 僕、何も聞いてませんけど」

 彼はわたしの唐突な提案に、素でビックリしていた。驚いて当然である、本当に、その場の思いつきだったのだから。

「ゴメンなさい、今思いついたの。こういう問題はデリケートだし、当事者の意見も聞いた方がいいかと思って……。お二人は、何か異存はありますか?」