リリーはジェーンの言葉にキッと振り返ると「意地悪なんてしてないでしょ!」とジェーンを肘で突く。

ハンナは困ったように俯いている。

「お嬢様たちが羨ましいです。私はあちこちの街を転々としていたので、同年代のお友達がいなかったんです。唯一親しかった友達とは喧嘩別れしてそのままになってしまいました」

サラは思わずそんな話をしていた。

難しい年頃の少女たちは、まだ今近くにあるものの大切さに気付いていない。

「奇術ショーは途中になってしまいましたが、占いの続きをいたしましょうか?」

「あ、そう言えばあなた怪我したんじゃなかったの?」

「ご心配ありがとうございます。怪我はしておりませんよ。奇術ショーは成功だったんです。ちょっと演出が行き過ぎだったようで、皆さまを驚かせてしまって申し訳ございません」

サラは丁寧に少女たちにお辞儀をして謝った。

「そう、怪我してないならいいわ。占いはまた明日にするわ。早く戻らないと」

「そうですね。ハンナお嬢様も地下に行かれたのでお疲れになったことでしょう」

サラはあえて地下という言葉を口にした。ハンナはもう暗闇を怖がっていないことを二人に伝えるために。

「え! ハンナが地下に? どうして?」

ジェーンが興味深そうに身を乗り出す。

「探し物を手伝っていただいたんです。ハンナお嬢様は怖がる私を励ましてくださったんですよ」

「ハンナ、もう暗い所は怖くないの?」

リリーの問いかけに、ハンナはサラをちらりと見上げ左右に首を振った。サラが言ったことの半分は嘘だ。ハンナは地下にいた間のことをほとんど覚えていない。けれど、ハンナを励ましていたのはサラだったことだけは覚えている。