グレンは晩餐会に集まった親族たちに、奇術ショーで起きたことの説明をするため一旦部屋を出て行った。

バルクロも箱を取りにテントへと戻り、サラはハンナを探していた。

メイド仲間に尋ねると、ゲストルームに戻ってはいないという。

サラは一度自分の部屋に戻り、扉の前に立っていたハンナを見つけた。

「ハンナお嬢様……」

ハンナはサラを見てほっとしたように笑みを見せた。

「サラがどうなったか心配だったの」

「私のことを気にかけてくださったんですね。ありがとうございます。このとおり無事ですよ」

「サラの言ったとおり、もう怖いことは起こらないみたい。わたし、やっぱり吸血鬼じゃなくて占い師になるわ」

サラはなんと答えていいか分からず、まだ幼さの残るハンナの顔を見ていた。

「ショーの時、血を見て叫んじゃった後、エレインが来て……」

ハンナが何かを話しかけたところに、リリーとジェーンの二人がやってきた。

「ハンナ、叔母様が心配してるわよ。早く部屋に戻って!」

リリーはハンナの手前で立ち止まると、腕組みをしてハンナを睨みつけた。

「あんたがうろうろしてるおかけで、探しに行かされるこっちの身にもなって」

「リリーお嬢様はお友達思いなんですね」

サラがそう言うと、リリーは眉をしかめて嫌そうな顔になったが、その両耳がほんのりと赤く染まっている。存外思っているほどリリーはハンナを嫌ってはいないのかもしれない。

こうしてちゃんとハンナを探しに来たのだから。

「ハンナはのろまな上に怖がりなの。ちょっと意地悪しただけですぐ泣くんですもの」

リリーの後ろに立っていたジェーンが顔をのぞかせてそう言った。