夕暮れの空に白い月が浮かんでいるのが見えて、サラはテラスの方へとハンナを誘う。

ランプに火を入れ壁のフックにぶら下げると、ゆらりと揺れて二人の影をテラスの向こうまで伸ばした。

サラはハンナが血を嫌がっていたことを思い出し、ルーン文字の刻まれた石を使うことにした。

「何を占いましょうか?」

「このお邸に、……吸血鬼がいるかどうか」

「吸血鬼、ですか?」

「お父様が、このお邸で血を流したら吸血鬼が襲いにくるって」

それでハンナはサラがナイフを取り出した時にあんなに怯えていたのだ。子どもが走り回って怪我をしないように、作り話で親が諌めたのだともとれる。

それでももちろんサラは真剣に占うつもりだった。

ハンナに石を選んでもらいながら、怖いもの、嫌いなものを尋ねる。

「暗いところ」

ハンナはぽつりと答えて石をひとつ取った。

「何でも仰ってください。ここで話したことは誰にも話しませんから。それが占い師の決まりなんです」

石に目を落としていたハンナは、上目遣いにサラの顔を見ると、小さな声で「いとこ」と言ってふたつ目の石を取った。

その石をぎゅっと膝の上で握りしめている。

サラの脳裏にはリリーとジェーンの二人の顔が浮かんだ。

「三つ目は?」

「……グレン叔父様」

意外な答えにサラは俯くハンナを見て、思わず何故と問いかけそうになった。

占いに集中しようとハンナの選んだ三つの石を机の上に置いてもらって、意識を集中する。

固く閉じた箱の蓋を開くようにハンナの意識を探れば、リリーたちの悪戯でハンナが地下室に閉じ込められる場面が浮かんだ。

助けにきたのはグレンだった。