エレインが部屋を出て行ったあと、サラは壁にかけられた絵をじっと長い間見つめて立ち尽くしていた。

確かに背景に地図は描かれている。けれどどこの地図なのか、さっぱり分からない。

文字は記されておらず、道や建物の印もない。大きさの縮尺も定かではなく、地形に見覚えもなかった。

バランの地図ならふたつの大きな川に挟まれているのですぐに分かるはずだったが、川のような線も描かれてはいない。

しばらくしてサラは気付いた。封じの箱はこの館にある。そして癒しの箱は奇術の館にいるバルクロが持っている。

地図の上でふたつの箱は手幅三つ分ほど離れている。

そこから考えてみれば、奏での箱はジナ川の近くにあることになる。

「見つけたわ!」

グレンは奏での箱もバルクロが持っていると考えていたようだが、この地図を見る限りでは奇術の館からは離れた位置にある。

アレンのいた学校の裏の林からジナ川を渡った先くらいのところだ。

バランの街の地図と照らし合わせればもっと正確な位置が分かるに違いない。

エドニーに言えば地図を貸してくれるだろう。

サラは急いで部屋を飛び出した。

けれど晩餐会が始まる前でエドニーは忙しそうにしている。とても声をかけられそうになかった。

仕方なく部屋に戻ると、部屋の前にハンナが立っていた。

「ハンナお嬢様、どうされたんですか?」

サラが声をかけると、ハンナはしばらく躊躇った後に、意を決したようにサラを見上げて言った。

「占って欲しいの」

サラはニッコリと笑ってハンナを部屋に招き入れた。