でも結局バルクロはヴィルヘルムを身代わりにして箱の呪縛からのがれ、再び魔物をあちらの世界へ送るために箱を探し始めた。

箱は三つ揃って初めてあちらの世界への扉を開く。

バルクロを再び封じの箱に封じるほどの力を持った魔女はもういない。

だから箱をそれぞれ違う場所に隠すしかなかった。

魔女の娘たちはそれぞれに母から箱を受け継いだ。封じの箱を受け継いだのがエレインの母だったという。

それなら癒しの箱を受け継いだのはサラの母ローラだったのかもしれない。

その箱が再びバランの街に集まっている。

「今から十八年前に、魔女の娘のひとりが、封じの箱を貸して欲しいと言って来たそうなの。その人はお腹に赤ちゃんがいたって私の母が言っていたわ」

その魔女の娘はローラに間違いないだろう。母は何故箱を必要としたのだろうか。

「私が知っているのはこのくらいよ」

「何故私に話してくれたんですか?」

「言ったでしょ。私も占いをするの。今日ここであなたに私の知っていることを話す。それが箱を取り戻すための最短ルートだったの」

そのためにアナベルを利用したのだと悪びれずにエレインは話した。

「でも箱は領主様がお持ちなんです」

「それも知ってるわ。だからこその花嫁候補作戦よ」

そんなことをしなくてもグレンなら話せば箱を渡してくれるのではないかとサラは思ったが、エレインの張り切った様子に言えずじまいだった。

少なくともサラの半人前の占いに比べて、エレインの占いはずっと具体的に見えていることだけは確かだ。

「エレイン、奏での箱は今どこにあるか分かりますか?」

エレインはきょとんとしたようにサラを見ながら言った。

「あの地図を見れば一目瞭然じゃない?」