大広間の窓から庭先へと取り付けられたオーニングの下で、子どもたちが楽しげに水遊びをしている。

父母の里帰りでもある晩餐会では、子どもたちも日頃の厳しい教育係の目を離れのびのびとしていた。

大人たちは涼しいサロンで歓談しながら、互いの領地の出来事について情報交換に余念が無い。

夜の晩餐に向けて、大広間と厨房の間を使用人たちが忙しなく行き交う中、サラはメイドの仕事ではなく占い師としての仕事をするようエドニーから言い付かっていた。要するに子守り代わりだ。

水遊びを卒業した十歳から十三歳くらいの女の子たちは、サラの占い部屋に興味津々だった。

サラも領主の姪っ子たちとあっては、気を抜かずにお相手を務める他ない。

三人の娘のうち二人は姉妹でグレンの姉アナベラの娘だ。名前はリリーとジェーンと言い、どちらも勝気で利発そうだった。

もう一人はグレンの兄の娘でこちらはおとなしいハンナという娘だ。

「ねぇ占い師さん、お母様が連れてきたエレインという人がグレンおじさんと結婚するかどうか占ってみてよ」

リリーがそう言うと、ジェーンが、「占ってどうするの?」とリリーの袖を引きながら耳打ちする。

「もし本当に二人が結婚してみなさいよ。ここに来る度に顔を合わすことになるじゃない」

「それはそうね。仲良くしておくべきか、さっさと退散してもらうか、わたしたちにも重大な問題ね」

リリーの返事にジェーンは納得したように何度も頷く。

そんな二人の会話をハンナは黙ってにこにこしながら聞いていた。

サラは大人びた二人の会話に舌を巻きながらも、ハンナの様子が気になった。

ハンナから滲み出てくる感情はとても居心地悪そうなのに、その表情は全く反対なのだ。

エレインという女性についても気になるが、その前にハンナの話を聞いてみたいと思わずにはいられなかった。

けれど、リリーたちの前でハンナが本心を語ることはないだろうとサラの勘が告げている。

サラはハンナがひとりの時にこっそり話しかけてみようと思いながら、水盤に目を落とした。